受託サービス(創薬研究)

ヒトiPS心筋シート組織による心収縮性評価サービス

Contents

本サービスの概要
心収縮性を評価する意義について
心収縮性の評価法
実施例:陽性変力作用剤 Isoproterenol の心収縮性への影響解析
本サービスご利用の流れ


・本サービスの概要 [戻る]

本サービスは開発中の薬剤候補コンパウンドが持ちうる心毒性を in vitro で評価するもので、以下を特徴としています。

1.  当社の持つ細胞シート工学技術(※1)を用いて、ヒトiPS細胞由来の心筋細胞から、拍動する心筋シート組織を作製。

2.  これを用いて、組織が生み出す「張力」をダイレクトに測定。薬剤候補コンパウンドによる心収縮性(※2)への影響を調べ、当該コンパウンドの持つ収縮性への影響データを取得。

3.  高感度な張力測定システムや強力なデータ取得ソフトウェア(LabChart®)を用いるため、張力波形の高精度データを長期間にわたって取得すると共に、詳細な事後解析も可能。


※1)細胞シート工学技術

細胞シート工学技術とは、東京女子医科大学の岡野光夫名誉教授・特任教授により開発された温度応答性培養皿を用いて、培養した細胞群をシート状に回収できる技術のことです[1]。再生医療を発展させる基盤技術の一つとして注目されています。

(※2)心収縮性(Cardiac Contractility)

心収縮性は「心筋線維が短縮する、本来備わっている能力」として定義されており[2]、臨床では左心室駆出率(Ejection Fraction)などが心収縮性の代替指標として使われています。心収縮性の低下および上昇はどちらも臨床的な問題を生じ得るため、医薬品が心収縮性に及ぼす効果の注意深い評価は、当該薬の安全な使用において重要であるとされています[2]

 

 

・心収縮性を評価する意義について [戻る]

創薬の現場において、心毒性は肝毒性や神経毒性と共に、医薬品開発の開発中止原因となる毒性として知られています。そのため開発コストが上昇する臨床研究の開始前に、開発中の薬剤候補コンパウンドがどのような心毒性特性を持ちうるのかを調べることには意義があると言えます。

 

1. 薬剤候補コンパウンドの心毒性評価における必要性

心収縮性は、電気生理学的試験(パッチクランプや多電極アレイ系等を用いた試験)の結果得られる情報(イオンチャネルへの薬の作用)とは異なる、独立した評価パラメータであり、安全性薬理試験ガイドラインにおいて follow-up studies の1項目として記載されています[3]。例えば、うっ血性心不全を引き起こす抗真菌薬 itraconazole を用いた評価では、心収縮性に対するオフターゲットの阻害作用(負の変力作用)が確認されており[4]、心収縮性評価の必要性が確認されています。同様の薬剤は多数確認されており[5]、新たな指標を加えた心毒性評価の必要性を示唆しています。

 

2. 医薬品(がん治療薬)開発における必要性

 近年は、がん治療薬が長期に渡って投与が増えており、原疾患であるがん以外、特に心血管系疾患が死因となるケースが増えています[6]。そのため、がん治療薬の長期投与による心臓への影響を正しく評価することが求められています。開発中のがん治療薬についても、前臨床試験として心筋細胞の心収縮性に及ぼす影響を詳細に調べることは重要だと考えられます。

 

参考文献:

[1] Shimizu et al. (2003) Biomaterials 24:2309-2316
[2] Guth et al. (2019) Frontiers in Pharmacology 10:884
[3] ICH Harmonized Tripartite Guideline (S7A) “Safety Pharmacology Studies for Human Pharmaceuticals” (2000)
[4] Ahmad et al. (2001) Lancet 357:1766-1767
[5] Page et al. (2016) Circulation 134:e32-e69
[6] Sturgeon et al. (2019) European Heart Journal 40:3889-3897

 

 

・心収縮性の評価法 [戻る]

フィブリンゲル上に心筋細胞シートを接着させ、細胞が収縮・拡張する際の発生張力をダイレクトにロードセル(高感度な張力センサ)で測定します。以下に対象成分(コンパウンド)評価の流れを示します:

 

STEP 1:心筋シート組織の作製

ヒトiPS細胞由来心筋細胞より細胞シートを作製し、フィブリンゲル土台に接着させた心筋シート組織を作製します。細胞シートは用途に応じて多層化が可能です。作製された組織は維持培養および前処理を経て、品質チェックを通過したもののみが張力測定に使用されます。

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 STEP 2:張力測定・コンパウンド投与試験

 心筋シート組織を培養槽にセットし、細胞が収縮・拡張する際の発生張力をロードセルでダイレクトに測定します。培養槽の攪拌・温度は専用の装置で制御され、心筋組織は電気刺激でレートコントロールが可能です。張力は最大5日間連続測定可能です。試験化合物を適切なスケジュールで投与し、張力への影響を評価します。

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・実施例:陽性変力作用剤 Isoproterenol の心収縮性への影響解析 [戻る]

心筋細胞が収縮・拡張(弛緩)する際の発生張力の波形は、陽性変力作用剤 Isoproterenol を投与することで下図のように変化しました。すなわち波高値(ピーク高さ)が大きくなり、収縮・弛緩にかかる時間が短くなります。コントロール(溶剤(DMSO)のみ)の場合は、張力波形はほとんど変化しません。

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張力を以下に示す5種のパラメーター(1〜5)で取得し、投与化合物の心筋細胞に及ぼす影響を、それらの変化としてとらえることが出来ます。 Isoproterenol の場合、下図のように、各パラメータが濃度依存的に変化することが分かりますが、この結果は Isoproterenol が生体心臓に及ぼす影響を良く反映しています。

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・本サービスご利用の流れ [戻る]

1. お問い合わせ

メールにて、ご依頼・ご相談内容をお知らせ下さい。

 

2. 試験概要書作成

弊社担当者が、ご依頼・ご相談内容について確認させて頂き、メールまたはお電話にて直接ご連絡させて頂きます。必要な場合Webミーティングさせて頂きます。ご依頼・ご相談内容に沿って試験概要書を作成いたします。

 

3. お見積り

試験概要書をもとに試験費用を算出し、お見積書を作成いたします。貴社にお見積書をご提示し、試験費用のご相談をさせて頂きます。

 

4. 契約締結

見積書について、貴社のご承諾を頂けましたら、弊社担当者宛に試験申込のご連絡をお願い致します。弊社にて、試験委託契約書、秘密保持契約書等を作成し、契約書を取り交わします。

 

5. 試験計画書作成

ご依頼の試験について、弊社担当者が貴社とご相談しながら、試験計画書、試験スケジュールを作成いたします。貴社よりご提供いただく試料(コンパウンド、細胞等)がございます場合、ご準備をお願いいたします。

 

6. 試験実施

試験計画書および試験スケジュールに従い、試験を開始いたします。

 

7. 試験報告書案作成

試験終了後、弊社担当者が試験報告書案を作成、報告内容に関するご確認をいただきます。

 

8. 試験報告書納品

製本した試験報告書を納品させて頂きます(メールおよび郵送)。ご要望に応じて、貴社ご提供の試料の残りや、試験によって得られる組織等については、宅配便等で発送も可能です。